家族信託のデメリットは?本当に適している人はどんな人?
最近、親の認知症への対策として「将来、介護が必要になったときの費用が心配だから家族信託を検討している」という人が増えています。
ただし家族信託は、親の意思能力が落ちても子供が資産を活用できるというメリットがある一方で、どんなデメリットがあるのか気になるという人も多いようです。
このページでは、そのデメリットを解説した上で、最後に家族信託が必要かどうかのチェックリストを紹介しています。
親の介護が心配で、「家族信託」を検討している人はぜひ参考にしてください。
この記事に書かれている内容
- 家族信託のおさらい
- 家族信託のデメリットとなる5つのケース
- 「家族信託」と「成年後見人」の違い
- 家族信託が必要度チェックシート
家族信託が必要なのはどんな人?
まずはじめに、家族信託がどのような人に適しているかを簡単に整理しておきましょう。
家族信託は、認知症などにより親の判断能力が落ちたときに、その財産を管理できるように備えるというのが主な目的になります。
将来的に、親の資産を売却せざるを得ないというケースではとてもメリットのある制度です。
つまり、家族信託が必要な人とは、親の介護費用(施設費用)を、実家を売却したり親の貯金から捻出する可能性がある人(家族)ということになりますね。
家族信託のデメリットとなる5つのケース
それではここで、家族信託のデメリットともいえる項目を整理したので確認してください。
- 委託者(親)の意思能力が必要
- 身上監護には対応していない
- 契約の対象となる受託者の力量が必要
- 兄弟や家族の関係が悪い場合
- 節税対策にはならない
1.委託者(親)の意思能力が必要
家族信託は契約に基づいて成立するため、委託者自身に契約内容を理解し、判断する能力が不可欠です。認知症などで判断能力が著しく低下している状態では、有効な家族信託契約を結ぶことができません。
2.身上監護には対応していない
家族信託は、あくまで財産の管理・運用を目的とする制度です。日常生活における身の回りの世話の手配、病院や介護施設の手続きといった身上監護は家族信託の対象外となります。
なお、家族信託の受託人としては、介護施設の契約手続きなどは対象外ですが、”家族” としてこれらに携わることはできます。
3.契約の対象となる受託者の力量が必要
受託者は、委託者の大切な財産を預かる重要な役割を担うため、その契約内容を理解し、責任を果たす意思と能力が必要です。受託者に財産管理の知識や経験が不足している場合、または他の家族への説明責任を果たさない場合などは、家族信託が円滑に進まない可能性があります。
4.兄弟や家族の関係が悪い場合
家族信託は、委託者の資産にかかわる家族全体のことなので、兄弟姉妹や親族間の関係が良好であることが最低条件と言えるでしょう。関係に問題がある場合は、信託財産の管理・運用をめぐって不信感や争いが起こる可能性は否定できません。
5.節税対策にはならない
家族信託は、節税効果を期待できると誤解している人もいますが、相続税や贈与税を直接的に軽減する効果はありません。家族信託は財産の管理・承継方法を円滑にするための手段であり、税制上の優遇措置はありません。
以上のような項目が家族信託のデメリットになるとも言われています。
「委託者(親)の意思能力が必要」という項目については、家族信託ではなく後見人制度(法定後見人)を利用するしか選択肢はありません。
その他の項目は、いずれもデメリットというよりも「注意点」と考えたほうがいいでしょう。
とくに、家族・親族間の関係が複雑な場合は、受託者の選任が難航するというケースが多くなることはたしかです。
家族信託と後見人制度との違いは?
次に、家族信託を検討する際によく比較される「後見人制度」との違いについて説明します。
後見人制度(成年後見人)には、後見人を裁判所が決める「法定後見人」と、後見人を自分で希望できる「任意後見人」があります。
先にも少し触れたとおり、「法定後見人」の方は、認知症などですでに判断能力が低下してしまった人の財産を管理する制度です。
言ってみれば、財産管理の対策をせずに親が認知症になってしまった場合の最終手段といえます。
なので今現在、親の認知の症状が進んでおらず、将来のために財産管理の対策をする場合は、基本的に「任意後見人」か「家族信託」のどちらかということになるでしょう。
ということで、この2つの制度の違いを表にまとめました。
【任意後見人】 |
【家族信託】 |
|
開始時期 |
契約後、親の判断能力が衰えた際に、 |
信託契約をしたときから |
任せる人 | 親が自分で選んだ人(家族) | 信頼できる家族 |
所有権 | 親 | 親 |
管理 | 子供(選んだ後見人) | 子供(受託者) |
運用 | 積極的な運用は不可 | 修繕・投資・立て替えなど可能 |
監査人 | 裁判所が認定(司法書士等) | なし |
監査機関 | 裁判所と任意後見監督人 | なし |
コスト |
初期費用:数十万円 |
初期費用:数十万円 |
「家族信託」と「任意後見人」との違いで大きなポイントになるのは、「家族信託の方が財産管理の自由度が高い」ということです。
家族信託は財産の管理を目的としているのに対して、後見人制度は、「生活の支援をする」という役割がベースにあるという点で目的が少し異なるともいえます。
何ができるの?
【任意後見人】 |
【家族信託】 |
財産管理の他に、介護サービスの手配や契約など、生活に必要なこともサポートできます。ただし、資産管理の自由度は少なく、基本的に裁判所の許可も必要です。 | 契約で決めた範囲で、財産の管理、運用、処分ができます。家賃収入を受け取ったり、必要に応じて家を売るなど、比較的自由な資産管理ができます。 |
任意後見人は、裁判所と監督人のチェックを受けることで、親の財産を安全に管理できるというメリットがあります。
とくに、家族内でのトラブルが予想される場合は、後見人制度を利用するほうが安心かもしれません。
一方で、その管理は厳しく、自由な財産運用は難しくなります。そのため、後見人自身も常に緊張感を持ち、責任を意識する必要があるため、精神的な負担を感じやすいと言えるでしょう。
もちろん、家族信託の受託者も、家族への報告などの責任は生じますが、今は便利なアプリで補助するシステムも充実しています。
家族信託の適正チェックリスト
それではまとめとして、家族信託が必要かどうかを判断するためのチェックリストを紹介します。このリストで、2つ当てはまる場合は「家族信託」を検討する価値はあると言えるでしょう。
今後の財産管理をしていくうえで、より柔軟な管理を希望していて、親族間の関係が比較的良好であるなら任意後見人よりも家族信託が適している可能性があります。
ただし、どちらの制度が最適かは個々の状況によって異なりまので、いずれにしても専門家に相談しアドバイスを受けることをお勧めします。
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